思い出のなかのお蚕さん

おばあちゃんちの上にあったお宅で飼われていたお蚕さんのことを思い出していた。都会の人に“上のお宅”というと「マンションの上の階の人?」なんて聞かれるけれど、わたしの言うそれはちょっと違う。おばあちゃんちは山間部にある。山の斜面に沿うように建っているので、“上のお宅”と言ったら「おばあちゃんちよりも山の上側にあるお宅」を意味している。

そんな場所にあるおばあちゃんちの前には、かつてお蚕さんの餌用の桑畑があって、上のお宅の2階一面は蚕部屋だった。

何千匹といるんじゃないかと思われるお蚕さんたちは、ひたすらムシャムシャと葉っぱを食べてうねうね動いていた。蚕部屋に入るとサクサクと音がするんだけど、多分それは葉っぱを食べている音だったと思う。

お蚕さんを触ると、光沢感のあるパウダーのようなものが付着する。
そのさらさらとした感触が好きで、ひたすらなでたり、
時には「ブローチ!」と言って自分の服に付けてみたりしていた。

思い出のなかのお蚕さんは、なかなかキュートだった。

久しぶりにそんな懐かしい光景を思い出して、あらためてネットでお蚕さんの姿を見た。

…こんなんだったかな。
……もっとかわいかったはずっ!

パソコン上に映し出されたお蚕さんは、すごく気持ち悪かった。あらためて、思い出は美化されてしまうことに気がついた夜。クーラーのないわたしの部屋は蒸し暑くて、まだまだ眠れそうにない。